インタビュー論

取材という仕事は人から話を聞きその人を描き出すこと。質問の善し悪しが取材の善し悪しを決めると言っても良い。
今回の取材では建築家へのインタビューが多いのだが相手の話の内容によってこちらも質問の内容が変わってくる。面白い話であれば続く質問もあれこれと思いついて話は転がっていくのだが、その話に興味を持てないと質問も浮かぶことはない。
質問すると言うこと、それは相手のフィルターを通して物事を見ると言うこと。そこに新たな発見がある。人の話を聞くことでその考えを知ることができ、更に自分の考えをぶつけることで新しい思考の展開を得ることができる。
個人的な質問であれば興味だけで推し進めればよいのだが、不特定多数に提供する取材となると質問に対しても慎重になる。個人的に聞きたいことが一般の興味と合致すればそれはそれで良しなのだが。
話を聞くということ、それは何を聞くか考えることでそれこそ自分を高める方法論なのだと最近の取材を通してあらためて思う・・・
本を読むにおいても理解が進めば読みながらツッコミを入れることができる。ツッコミをいれることでまた自分なりに考える。それができるとき、その本を読みこなしたという実感を持つことができる気がする・・・読書も取材と同じなのかも知れない。
この仕事を始めたとき、「取材は度胸だ」と教えられた。恥ずかしがらずとにかく聞いてみる。知ったフリをせず謙虚に聞く。事前の下調べは当然のこと。その上で専門的な話からどんどんレベルを落としていく。相手の実力が高ければ高いほどそのレベルは大きく落とすことができる。わかりやすく簡単に話すと言うのはとても実力のいることなのだから。
事の本質を掴み、難しいことをいかに簡単に話すことができるか。また、聞き出すことができるか。それがインタビューにとって一番大切なことかも知れない。
また、自分一人で考える事などたかが知れている。私自身そう感じている。これまでに培った狭い世界での思考に外の養分をいかに取り入れるか、それが自分に対するネタの仕込み、それこそ取材なのだろう。仕事での取材、自分のための取材、全て思考の肥やしとなればそれで良し。取り入れた後の取捨選択こそオリジナリティなのだろう。
最近、取材に出てそんなことを思い直した・・・